診察室雑感
診察室雑感 |
コロナ禍の体調不良や業務量増加等の理由でやむなく離職された患者さんや家族の方が少なくありません。休職ないし退職する従業員が増え、従業員1人あたりの業務量も増加しているようです。この状況は従業員の心身におそらく多様なストレス因となっている、と考えなければならないのでしょう。
当クリニックに通院しているうつ病圏の患者さんの症状で、この1〜2年感じていること。うつ症状に典型的な抑うつ気分、意欲低下という症状はこれまで通り多く認められます。それとともに、漠然とした不安感、なんとなく冴えない、倦怠感といった典型的とはいえない症状を訴える患者さんが増えてきている、これは最近の変化と感じています。
職場でのパワハラやセクハラに関する相談。これは従前からもありましたが、この1〜2年も変わらず、或いはやや増えている印象です。(職場におけるこれらのハラスメントに対する防止対策は、すべての事業主において2022年4月1日から義務化されているにもかかわらず)
Ⅰ. パワーハラスメントの定義
- ①優越的な関係を背景とした言動
- ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- ③労働者の就業環境が害されるもの
これら①〜③までの要素をすべて満たすもの
Ⅱ. 妊娠・出産に関するハラスメントの定義
職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者等の就業環境が害されること(解雇、降格、不利益な配置変更等)
Ⅲ. セクシャルハラスメントの定義
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されること
(性的な冗談やからかい、食事を執拗に誘う、性的な関係を強要したり、必要なく身体へ接触する等)
防止対策が義務化されているとはいえ、患者さんが録音してきたスマホからは、怒声・叱責・誹謗・中傷の大声が聞こえてきます。また、過度に接近してくるキモい上司への恐怖感の訴えも診察室で減ることはありません。小規模事業所では、従業員が職場を訴えることはほぼ非現実的です。耐えるか、耐えられず精神不調となるか、結果として辞めるか、これが現状です。
産業医として、職場のメンタルヘルス環境と物理的環境と、多面的に目を向ける必要をあらためて感じます。
診察室雑感
2023年8月